航空宇宙団体(LOTAR)

航空宇宙団体(LOTAR)

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〒130-0013 東京都墨田区錦糸1-2-1

航空宇宙団体(LOTAR)

航空宇宙団体(LOTAR)について

◆ 航空宇宙団体(LOTAR)の概要

航空宇宙産業は特有の課題を抱えています。製品のライフサイクルが数十年に及び、その間、設計から製造に至るまでの膨大な量のデータを安全に保存し、いつでもアクセスできる状態に保つ必要があるのです。これは、文書や設計図面から製造データ、運用ログに至るまで、あらゆる情報を含んでいます。この長期的視点に立つ必要性が、LOTAR(Long Term Archival and Retrieval)イニシアチブの誕生につながりました。

LOTARは、航空宇宙産業におけるデジタルデータの長期保存と、未来の技術変遷を乗り越えたデータの取り出しや再利用のメソッドを確立することを目指しています。このグローバルな取り組みには、多くの国々の航空宇宙機関が協力し合っており、データの長期保存に関する標準化を進めています。その核となるのは、STEPやAP242といった既存の国際標準です。これらは、製品データの交換を効率化するための規格であり、長期アーカイブの文脈においても極めて重要です。

企業がLOTARイニシアチブに基づく標準や方法論を採用すると、その利点は膨大です。何年、何十年もの間、安全に保管されたデータは、新しい技術やフォーマットに適応しやすくなります。これにより、過去のプロジェクトでの設計やテストデータを再利用し、新たなプロジェクトへとスムーズに統合することができるため、コストの削減やプロセスの高速化に貢献します。

また、LOTARイニシアチブは、航空宇宙業界だけでなく、ISOやProSTEP iViPといった他の標準化機関とも協力関係にあります。このような協業により、航空宇宙業界を越え、幅広い産業でのデータ長期保存の標準化が進むことが期待されています。

現代においては、デジタル技術の発展により、データの長期保存というテーマが以前にも増して重要視されています。データの保存期間は延び続け、そのアクセシビリティや再利用性は企業にとっての重要な資産となります。LOTARイニシアチブは、これらの課題への対応策を提供し、航空宇宙産業をはじめとする多くの分野で、その価値を証明しています。このイニシアチブにより、過去の知識が未来のイノベーションへと繋がる架け橋となることでしょう。航空宇宙産業のみならず、他の産業でもこの先見的な取り組みから学び、データの持続的な価値を最大化する手法を見出すことができるのです。

2023年11月

◆ LOTARと型式認証について

航空宇宙産業における製品の信頼性と安全性は、非常に高いレベルで求められます。この要求に応えるためには、製品の設計から運用、そして退役に至るまでの全ての情報が正確かつ永続的に保持され、必要に応じてアクセス可能でなければなりません。LOTAR(Long Term Archival and Retrieval)イニシアチブは、まさにこれらの情報を長期にわたって保存し、検索可能な状態に保つことを目指したプロジェクトです。これは、航空宇宙関連の製品データを技術の進歩やフォーマットの変化に影響されることなく将来にわたって再利用可能な形で保存し、航空宇宙製品のライフサイクル全体を通じて情報の可用性を確保するために重要です。

このLOTARと、航空宇宙産業で不可欠なプロセスである型式認証とは密接に関連しています。型式認証は、航空機やその部品が安全性と性能の厳格な基準を満たしていることを保証するための航空当局の公式な手続きです。このプロセスには、詳細な設計図面、テスト結果、製造プロセスに関する文書が含まれ、これらが適切に保存されていることが、長期にわたる製品の安全性を保証する上で不可欠です。

LOTARイニシアチブが型式認証プロセスをどのようにサポートするかというと、設計やテスト、製造に関する重要なデータを、技術の変遷やデータフォーマットの進化にも耐えうる方法で保存することで、いつでもそれらが完全で信頼性のある状態でアクセス可能であることを保証します。航空当局は、LOTARによって保存された情報を利用して、過去の認証情報に基づき、製品が現在の規制に適合していることを確認できます。これは、万が一にも製品に問題が生じた場合の調査や、新たな規制が導入された際の適合性の確認にも不可欠です。

また、LOTARは、製品が型式認証を受けた後も継続して役立ちます。航空宇宙製品は、その寿命が数十年に及ぶことが多く、保守やアップグレード、さらには後継製品の開発に際して、元の設計データや運用データが必要とされます。LOTARが提供するデータ管理システムは、このような情報を確実に保持し、必要に応じて迅速に取り出すことを可能にします。

総合的にみると、LOTARイニシアチブは航空宇宙産業における型式認証のプロセスを直接的にサポートするだけでなく、製品ライフサイクル全体を通じてデータの整合性と再利用性を保証する極めて重要な役割を果たしています。これにより、製品の安全性と信頼性を維持し、最終的には旅客と乗組員の生命を守るための基盤が強化されるのです。

2023年11月

◆ LOTARコンソーシアム参加企業の一部

航空宇宙産業は、その高度な技術や製品のライフサイクルの長さから、データの長期保存と再利用が非常に重要とされています。この課題に対応するため、多くの航空宇宙関連企業や団体がLOTAR(Long Term Archival and Retrieval)の取り組みに参加しています。以下は、その参加企業の一部です。

Airbus - 欧州の主要な航空機メーカーで、世界で最も広範囲の旅客機ラインナップを持っています。
Boeing - アメリカの航空機メーカーで、旅客機、軍用機、宇宙機器などを製造しています。
Dassault Aviation - フランスの航空機メーカーで、ビジネスジェットや軍用機を生産しています。
BAE Systems - 英国の防衛、航空宇宙、セキュリティソリューションの提供者。
Rolls-Royce - ジェットエンジンやターボプロップエンジンの主要な製造業者。
Safran - 航空機やロケットのエンジン、装備品、内装品の製造を手がけるフランスの会社。
Lockheed Martin - アメリカの全球的な防衛・航空宇宙関連企業。
Raytheon - 防衛・航空宇宙分野での先進技術の開発を行うアメリカの大手企業。
Embraer - ブラジルの航空機メーカーで、特に地域ジェットの市場で強い。
Bombardier - カナダの航空機および鉄道車両の製造業者。
General Electric Aviation - 航空機用エンジンの製造で知られる、GEの部門の一つ。
Pratt & Whitney - ジェットエンジンの製造で有名なアメリカの企業。
Northrop Grumman - アメリカの防衛・航空宇宙関連企業。

これらの企業以外にも、サプライヤー、サブコントラクター、ソフトウェア企業、航空当局、研究機関など、多岐にわたる関連企業や団体がLOTARの取り組みに参加し、航空宇宙産業のデータ保存と再利用の標準化に貢献しています。

2023年10月